週刊アーサー、不定期便
<第21回、ゴッホの生き方、その2>

ゴッホの絵の色合いって暗かったんだけど、
彼が凄く感化されたのは浮世絵なんだよね。
彼は600枚位の日本の浮世絵を持っていて、
北斎なんかの色合いに魅了されたんだよね。
北斎が描いた"日本橋を歩いている庶民の絵”を
自分でもまねて描いたりして、
日本でもそういう展覧会あったみたいだけど。
ゴッホの描いた絵のほうが、北斎よりも心に伝わったって
言う人もいるらしいけどね。

彼は日本の浮世絵に魅了されて、
30代の頃日本に行きたいという思いにかられたんだけど、
そのころの日本は遠い異国の地。
行けそうな所で、一番日本の風土に似ているのが
フランスのアレルだった。
そして、そこで暮らすようになったんだ。
彼の良き理解者はテオという弟で、
彼の絵を買ってくれてたりコレクトしてくれたりで、
いつも援助してたんだよね。
彼の絵は、生存している時には1枚しか売れなかったからね。
で、弟が1番の良き理解者で、
手紙をしょっちゅうやり取りするような
すごく親密な関係だったんだ。

ある時、テオがお金出してアトリエとしてゴッホに家を買ったら、
彼はそこを真っ黄色に塗った。
その頃、ゴッホはゴーギャンという親しい友達が出来たんだけど、
ゴーギャンはタヒチの女の人のヌードの画が大好きな
プレイボーイなんだよね。
ゴッホは超真面目で暗い。まるで陰と陽なんだよ。
ゴーギャンとゴッホは一緒に生活するんだけど、
やっぱりゴーギャンは合わないんだよな。
黄色い色が目障りで、
「部屋中黄色かよ、お前黄色以外の色使えよ!」みたいなさ。

ある時ゴーギャンがゴッホの似顔絵を描くんだけど、
顔を真っ黄色に描いてるわけ、黄疸が出てるみたいにさ。
そしたら、ゴッホは真面目だからそれ観て、
「これこそ私のほんとの姿だ。」なんて言って、
変なふうに神妙になるわけ。
でもしょっちゅう喧嘩ばかりするようになって、
一緒に暮らすことが喜びじゃなくストレスになってきた。
喧嘩して一緒に暮らすことが耐えられないって、
結局ゴーギャンは出て行った。
それから、彼どんどんこもるようになって、
自分の耳を削いだり、自分のアイデンティティに苦しんだ。
そして、精神病院に入れられた時に、
テオの奥さんから手紙が来る。
「私達に子供が出来た。
子供の名前に、あなたと同じ名前をつけることにした。」って。
ゴッホは父親のように生きようと思っても生きられなかった。
自分のアイデンティティを失い、どん底にいた。
テオはそれを見て、ゴッホの名前を自分の子供につけた。

ゴッホが死ぬ前の最後の絵があるんだけど、
それは産まれてくる子供へのプレゼントの絵なんだ。
「アーモンドの枝に咲く花」っていう絵。
空は青空で、アーモンドのごつい枝から花が咲いてるっていう、
今までとは全然違う命の継続みたいな絵。
ゴッホはその絵を贈った後に自殺して、
そして数週間で死ぬんだけど。
その数カ月後に、今度はテオも死ぬんだよ。
二人がやりとりしてた手紙をテオの奥さんが読んで、
感動してこれを本にするんだよ。
その本が世界中で読まれて、彼の絵が売れるようになった。
面白いよね人間の生涯って。そしてゴッホの名声が轟く。

彼の見えないところで、良き理解者が居たってゆうのが面白いよね。
「アーモンドの枝に咲く花」っていうのはゴッホ家の家宝でさ。
今5代目ぐらいがいるんだけど、
生まれて来る子供の部屋に飾ってあるんだよ。
そういうのを見ると、鳥肌立つよね。
人間、山あり谷ありの人生だけど、
どっかで理解してくれている人がいるんだよね。
ゴッホは自分流の表現をしたけど、
その表現を誰も分からなかった。
でも、テオとの手紙のやりとりに感動した奥さんが、
それを本にしたことで広がるんだよね。
アポロが種をまき、パウロが水を注ぐ。そして成長させるのは神。

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