編集 |
モスクワ駅から? |
鈴木
|
モスクワ駅ってのはないんですよ、実は。
僕も初めて知ったんだけど、
駅の名前って、行く先の地名なんだよ。
例えばウクライナに行く駅は
ウクライナ駅という。
ペテルブルグに行く駅は
昔のレニングラードだから、
レニングラード駅。
それがモスクワの中に、
ポンポンといくつかある。
|
編集 |
効率悪いですねえ。 |
鈴木 |
悪いねえ〜。
レニングラード駅にいったら、
ホームが5、6本あるんだよ。
全部レニングラード行きなわけ。 |
編集 |
そうかあ、スケールが違うのかなあ。 |
鈴木 |
おーーーきな、
レニングラードの駅。
そこに毛皮を着た人たちが
「オワーッ」っていて、
結構怖い感じなんだよ。
真夜中なんだけど、
ギター弾いたり騒いだり。
社会が資本主義になって
みんな模索中だから、
どこで憂さをはらしたらいいのか
分からなくて、
平気で酒を飲んで歌ってるわけだよね。 |
編集 |
楽しそうな雰囲気はないんですか。 |
鈴木 |
楽しいとは思えないね。
だって真冬の夜中、11時過ぎだよ。
そうでもしないと
明るくなれないよって感じ。
おまけにタクシーを降りて
荷物を持ったとたん、
警察官がやってきて
僕にだけ「パスポート!」
って言うんだよ。
通訳の人が
「この人はなんでもないんだよ。
コーラスをやってる人だ。」
って説明したんだけど、
若い警官でね。
後で聞いたら、
チェチェン人と
間違われたんじゃないかって。(笑い)
|
編集 |
チェチェン人!?
チェチェン人って、
雪夫さんみたいな感じなんだ。 |
鈴木 |
僕にもなんとも言えない。
ちょっとアジアに近いから、
ヨーロッパのアジアって顔。
いまロシアは、
チェチェンを一番恐れてるんだよね。
チェチェンってイスラム教で、
テロの問題もあるし。
「チェチェン人がここにいる、
引っ張らなきゃ」って思ったらしい。
|
編集 |
やばいじゃないですか。 |
鈴木 |
やばいよ。
普通はそこでお金を渡せば、
だいたいなんとか
なるらしいんだけどね。
まあ、そこはなんとか乗り切って
後はひたすら夜汽車での旅。
たった500キロのところを
のーんびり8時間。
30数年前に、
ペテルブルグとモスクワの間に、
日本の新幹線のようなものを作ろう
という話があったんだって。
だけど、全然やる気がない。
結局やらなかった。
|
編集 |
なんか、似合わないですよね。 |
鈴木 |
だから今のままでいいんだって。
8時間かかって。 |
…つづく
|