鈴木雪夫、ロシアへ行く
第6回「モスクワ、4日目」
編集 モスクワ駅から?

鈴木

モスクワ駅ってのはないんですよ、実は。
僕も初めて知ったんだけど、
駅の名前って、行く先の地名なんだよ。
例えばウクライナに行く駅は
ウクライナ駅という。
ペテルブルグに行く駅は
昔のレニングラードだから、
レニングラード駅。
それがモスクワの中に、
ポンポンといくつかある。

編集 効率悪いですねえ。
鈴木 悪いねえ〜。
レニングラード駅にいったら、
ホームが5、6本あるんだよ。
全部レニングラード行きなわけ。
編集 そうかあ、スケールが違うのかなあ。
鈴木 おーーーきな、
レニングラードの駅。
そこに毛皮を着た人たちが
「オワーッ」っていて、
結構怖い感じなんだよ。
真夜中なんだけど、
ギター弾いたり騒いだり。
社会が資本主義になって
みんな模索中だから、
どこで憂さをはらしたらいいのか
分からなくて、
平気で酒を飲んで歌ってるわけだよね。
編集 楽しそうな雰囲気はないんですか。
鈴木

楽しいとは思えないね。
だって真冬の夜中、11時過ぎだよ。
そうでもしないと
明るくなれないよって感じ。
おまけにタクシーを降りて
荷物を持ったとたん、
警察官がやってきて
僕にだけ「パスポート!」
って言うんだよ。
通訳の人が
「この人はなんでもないんだよ。
コーラスをやってる人だ。」
って説明したんだけど、
若い警官でね。
後で聞いたら、
チェチェン人と
間違われたんじゃないかって。(笑い)

編集 チェチェン人!?
チェチェン人って、
雪夫さんみたいな感じなんだ。
鈴木

僕にもなんとも言えない。
ちょっとアジアに近いから、
ヨーロッパのアジアって顔。
いまロシアは、
チェチェンを一番恐れてるんだよね。
チェチェンってイスラム教で、
テロの問題もあるし。
「チェチェン人がここにいる、
引っ張らなきゃ」って思ったらしい。

編集 やばいじゃないですか。
鈴木

やばいよ。
普通はそこでお金を渡せば、
だいたいなんとか
なるらしいんだけどね。
まあ、そこはなんとか乗り切って
後はひたすら夜汽車での旅。
たった500キロのところを
のーんびり8時間。
30数年前に、
ペテルブルグとモスクワの間に、
日本の新幹線のようなものを作ろう
という話があったんだって。
だけど、全然やる気がない。
結局やらなかった。

編集 なんか、似合わないですよね。
鈴木 だから今のままでいいんだって。
8時間かかって。
…つづく
夜汽車の客室。これに乗って旅は続く。
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