鈴木雪夫、ロシアへ行く
第12回「ペテルブルグ、5日目」
編集 毎年行く予定はないんですか。

鈴木

今のところないけど、
もしかしたらありうるかもね。
評判が悪かった訳じゃないからね。

編集 日本でもぜひ多くの人に
知ってもらいたいですね。
スラブ語で歌うというのは
あんまりないでしょう。
鈴木 ないです。
細かいことを言うと、
母音の深さとかは
完全ではないですけど、
子音の発音なんかは
十分に理解してもらえる
語学力はついてた。
修道院のコンサートでも、
ブラボーだったしね。
編集 すごいですねえ。
鈴木 長くやってればね。
言語のことでも
みんな自分たちで
厳しくチェックするからね。
編集 確かに、日本での歴史があったから
出来た部分もありますね。
鈴木

今年はロシアとの友好100周年
ということもあって、
それに関連したイベントを
いろいろやってるんですよ。
文化庁の助成を受けての公演も
たくさんあるけど、
だいたいは能のような
日本の伝統芸能。
ロシア正教の音楽をやったのは
僕らだけだった。

編集 向こうの人にとっては、
自分たちの文化を
きちんと消化して
やってくれているというのは
嬉しいですよね。
鈴木

結果的にはそうでした。
でも、最初は「やれるの?」
って感じでしたね。

編集 そりゃ、そうだ。
鈴木

70年におよぶ社会主義の中で、
ロシアでは宗教音楽を
やっていなかったというのが、
私たちには有利だった。
ソビエト時代にも
ロシア正教の歌を歌い継がれていたら、
また別の土壌があったかも知れない。
でも70年という間が
スポッと抜けてるわけで、
ここ10年くらいで
やっとロシア正教の音楽が
復活してきてるわけだから、
歴史が浅いんですよ。
数年前、ICUのOBの合唱団の指揮者が
ロシアに行って、
むこうの教会の眠っている楽譜を
いっぱい持ってきたんですよ。
ラフマニノフやチャイコフスキーは
有名ですけど、
そうじゃない作曲家の曲は
革命の時に名前も楽譜も
消されてしまったんですよね。
亡命したり、餓死したりとかでね。

編集 すごいですねえ。
鈴木 そういいう作曲家の楽譜を
日本に持ってきて、
日本初演した人がいるんだけど、
そういう音楽は
ロシアの人にとっても
新しいだろうと思うんですよ。
いままで接したことのないような合唱曲だし、
なんとも素晴らしいですよ。
編集 そうか、面 白いもんですね。
鈴木 毎年10月にやってるコンサートも、
普段あまり聴かないような音楽だから、
ぜひ聴いてみてください。
いまではあまり宣伝しないのに、
毎年その時期には
その曲を聴こうという人が
確実に増えてますから。
編集 そういうのが、
今は信用されますよ。
宣伝しなくても
1000人くらいは来るんでしょ。
鈴木 一度聴いた人は
必ず来るというふうになってきてる。
編集 雪夫さんが日経に出たというのは、
始まって以来の
大きなプロモーション
なんじゃないですか。
鈴木 今回はオクタビストのことと、
晩祷の合唱をやる
ということで記事が出てますからね。
今年の秋は結構、
また増えるんじゃないかな。
エカテリーナ宮殿のレストラン。今回は食べ物の写 真、多し。
編集部へのメールは下記のアドレスへ(件名にロシアと書いてください)
Copyright(C)2003-2004 Bebrave