私たちの生活

第9話

糖尿病と共に生きるって、奥が深いな、とつくづく思う。
糖尿病はそれ自体では全く痛くもかゆくもない。
そこがミソなのである。

もし、目に見えてここが痛い、起き上がれない、
具合が悪い、絶対安静、とかはっきりしてい たら、
もう観念して仕事もやめたり、
あるいは大幅にペースダウンしたり、
とにかく療養第一となるのであろうが、
糖尿病の場合、合併症を併発しない限りは
全く今まで通りの生活が可能だから、
かえって中途半端でたちが悪 い。

おまけに「糖尿」という名前がどうもしまらない、
と感じるのは私だけであろうか?

「糖尿?ああ、ぜいたく病だね。」
なんて一蹴されてしまう事もあ り・・・。

「いえ、違うんですよ。
やっぱり、なりやすい体質と言うのは遺伝するも のであって、」
なんて言い訳してみたくなるけれど、
今や6人に一人が患者or予備軍と言われる今日、
糖尿病=自己管理ができない人、
とレッテルを貼 られても
どうも大きな声で言い返せなかったりして・・・。

それは行政方面のケアにも如実に表れている。
例えば、透析を受ける人は障害者年金をもらう事ができるのだが、
透析の原因が糖尿病で・・・という場合には
申請が受理されない事もあるそうだ。
結局、自己責任でしょ、というわけである。

だけど、この自己責任を全うするためには、
多くの葛藤がつきまとうので あるが・・・。

さて、数回に分けて長々と書いて来たが、
実際には入院期間は僅か10日 間だった。
とは言え、予期せぬ入院騒ぎに我が家の家計は火の車。
一日退院 が延びる度にハラハラする私であった。

おまけに彼は毎日病院から仕事に通っていたので、
本来なら入院中は3食毎に血糖値を
チェックしなくてはいけないのに、それもままならない。
だか ら、入院期間の中盤以降はほとんど惰性。
おまけに主治医の先生に会える日はそう多くはない。
そんな事もあって私 の中では
「この入院ってどこまで意味があるのかなぁ〜。」
と言った疑いの気持ちが 芽生えていた。

先生にとっては多くの患者の一人だし、
退院が一日延びよう が早まろうが、
どうって事ないかもしれないけれど、
うちにとっては「おお ごと」なんだよ〜〜。
・・・しかし、あの入院当日を思い起こせば、
そんな事を言えた私たちで はないのだった。

先生にしてみれば、入院しても仕事を休まず
病院には寝に帰るだけ、とい うしょうもない患者を
良く忍耐して下さったのだと思う。
退院時には
「本当 はまだ不本意な数字だけれど、
外出が多くて3食チェックできない状態ではどうしようもない、
という意味での退院ですよ。」
と念を押されてしまっ た。

それでも、入院当日には空腹時で300mg/dlもあった
血糖値が200近 くまで下がっていたから、
まずは入院生活が功を奏したと言うべきだろう。
少なくともペプシは1本も飲めなかったはずだし。

幸いインスリン注射はまだ必要ないと言われた。
また、様々な検査の結 果、現在の所は合併症の徴候もないと判明した。
ありがたかった。

とは言うものの、少なくとも2〜3年は
血糖値が高いまま放置していたはずだから、
これが後になって影響しないとも限らないが。

とにかく、今からできる最善を尽くして行こう。
薬と食事と運動。この3 本柱でがんばってみよう・・・。

ところで病院に面会に行った帰りに、
ついつい一人でラーメン屋へ寄ってしまった私である。
駅前においしそうなラーメン屋がオープンして、
毎日通り過ぎるうち、 とうとうこらえきれなくなってしまったのだ。

でも、ラーメ ンをすすりながら、何だか罪悪感に苛まれた。
「にんにくこってり」が大好きだったダニエルだけど、
これからはラーメンは私だけの
密やかな楽しみに なってしまうんだなぁ・・・。

次回からはいよいよ食事療法実践編をお届けいたします。
                           Yumiko Beck

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