すっかり、ご無沙汰してしまった
「私たちの生活」。
しかし、その間も生活は
当たり前のように続いており、
いつしかあの入院 から
8ヶ月がたとうとしている。
本当に不思議だけれど、
節制した食生活 は三日坊主にならずに
ちゃんと続いている!
8ヶ月近くも続くとこれはもう、
ひとつの習慣と言ってもいいかもしれな い。
具体的な食生活を紹介する前に、
まずは退院後、
病態がどのような経過をたどったか
記しておこう。
医者はその日その日の血糖値よりも、
むしろHgA1Cと呼ばれている
糖鎖 ヘモグロビンという値に着目する。
この値には、
前2〜3ヶ月の血糖値が反映されるそうだ。
だから、普段したい放題の食生活をして、
医者に行く 直前になってほとんど絶食!
とかがんばって、
とりあえず診察日に血糖値 だけは抑えました、
なんていうのは通用しないのである。
糖尿病の世界では日々の地道な努力あるのみ、
いわゆる『一夜漬け』は効 かないのだった。
以前にも書いたが、
HgA1Cは健康な人で4〜5%、
7%以下に保てると合併症のリスクが減ってくる。
できれば、6%以下に抑えたいところだ。
ダニエルの入院時の値は13%(なんて恐ろしい!)、
10日後の退院時にはまだ変化もないだろう
と言うことで測らなかった。
退院後は血糖値測定器で
毎日朝食前の血糖値を測定している。
ペンの先から勢い良く針が飛び出すのだが、
こうして指から血を採取。
それを測定器に差し込んだ試験紙にしみ込ませて、
待つ事数秒。
現在の血 糖値が表示される。
小さな計算機のような形状だ。
毎日測ることによって、
ちょっとでも節制の道をはずれかけると
すぐに修 正できるというわけ。
私も試しにやってみたけど・・・
痛い!!
節制の道はキビシイのだった。
薬は二種類処方された。
ひとつは血糖値そのものを下げる働きのある薬。
もうひとつは、体内から分泌される
インシュリンの効き目を良くする薬。
これらを決められた時間に服用する。
そして、なんと言っても日々の食事と運動。
これらをせっせと続けた結果、
毎日の測定結果の平均値は
きれいな下降線 をたどるようになった。
そしていよいよ迎えた、退院から一ヶ月後の検査の日。
HgA1Cは9.8%だった。
これは医者も驚くすばらしい快挙だった。
何しろ3%の減少である。
後に「いったい、どうやったんだ?」
と聞かれたほどの数値だった。
秋には6%になった。
この時点で、
インシュリンの働きを良くするための薬はやめて
血糖値を抑える薬、一種類のみになった。
この頃の日々の血糖値はだいたい100〜110mg/dlの間。
時には90mg/dl台ということもあり、
こうなると気分はほとんど記録に挑戦する運動選手のよう。
節制は一種の快楽ともなってくる。
…が、
そこにはクリスマス・お正月と、
糖尿病患者にとっては
『魔の季節』 とも言うべき誘惑が待ち受けていた。
家族や友人たちとの会食も増える。
「今日はスペシャルだから!」
とか何とか言って、
舌鼓の音が聞こえてく るよう。
が、この時ばかりは、私も大目に見ることにした。
人生にはたまのご褒美 も必要だものね。
現在は薬を減らした影響もあってか、
血糖値の平均は110〜120 mg/dl。
ちょっと高くなっちゃったなー、
と気にしている。
しかし、後になって聞いた話によると、
血糖値にばかり固執していると
思わぬ落とし穴があるらしい。
血糖値があまり急激に下がると、
目の合併症 である眼底出血が
起こる危険があるというのだ。
人間の身体はというものは、
悪いなら悪いなりに
何とかバランスを保って いるそうだ。
だから、急激に状況が変わると
そのバランスが崩れてしまう らしい。
私たちは、
とにかく血糖値さえ下げればいいのだ、
と毎日の値に一喜一憂 していたが、
やっぱ奥が深かった。
Yumiko Beck
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