クリエイティブの現場

今回の作品はこれ!

鈴木雪夫
「Feel The Spirit+2」

芸は身を助すくという言葉がありますが、この人を見ているとなんだかそんな感じです。

鈴木さんのプロフィールはこちら

私の知り合いのCM音楽制作会社「スーパーボーイ」のサンプルCDに、鈴木雪夫さんの声が登録されています。今回スーパーボーイの御好意によりその音をここで披露することが出来ました。この原稿も本人が考えたらしいです。笑ってください。↓↓↓

第7話です。
鈴木さんの音楽経歴をいろいろ聞いてきましたけど、今日からはCD「Feel The Spirit+2」についてのお話です。

編 集 じゃあ、そういう活動を続けてきて、レパートリーもたまってきて、
作品にして残そうと。
鈴 木

そう、それと僕の病気のこともあったからね。 自分でわかってたし。
ジョンスリーのコンサートの時は肝炎だったしさ。 真っ黒けで。
治りかけの時にこんど腎臓の病気がわかってきて。
いずれ俺、だめになるなあーってのが分かった時から、とにかく今ある曲を一度形にしておきたいというのがありましたね。

編 集 このCDに入っているのはフェーバリットソングというのか…、
鈴 木

そ、でもはっきり言うとそれしかなかったっていうだけ。
精一杯でしたね。

編 集 このタイトルにあるはスピリットって「聖霊」ですか。
鈴 木 うん、聖霊っていうとなんだか「ナニ?」って感じがするけどね。 なんてんだろ、「うちなるもの」ですよね。
編 集 選曲は鈴木さんですか。
鈴 木 そうだけど、さっき言ったように精一杯だったからね。譜面 なんか全部手書き。今ならコンピューターがあるけど、全部自分で手書きで音を下げたりしてたからね。その積み重ねだから何曲もなかったですよ、15曲くらいしか。
編 集 伴奏はピアノでやってるじゃないですか。
やっぱりそういうスタイルが合うんですかねえ。
鈴 木 もともとのアレンジはバーレーという人のを使うわけですよ。
彼は1900年台の初頭、アメリカンの音楽院で教えてた人なんですが、ドボルザークに新世界のモチーフを教えた人なんですよ。
「アメリカンインディアンが持っているこのメロディーがありますよ。」って。
ネイティブアメリカンだよね。 もちろん黒人も含めて。
「マイノリティの人達のこういうメロディーがありますよ。」って。
彼が作ったアレンジは、それまでの黒人霊歌っていう非常に暗い雰囲気のある曲を、リートの世界に持ってきたんですよ。 リート、つまり歌曲。
歌曲になるためには、やっぱりちゃんとアレンジされたピアノ伴奏が必要なの。その彼の作った音を大事にしたいなと思って、僕はピアノでやるんですよ。
コード譜でやるともっと違うものになるのは分かってんだけど、彼の作った音というのがすごくイイ。
で、そのアレンジ譜に書いてあるピアノの音があったほうがいいなと僕は思うし、大事にしたいなあって思うからピアノ伴奏でやるんです。
編 集 ちょっと聞き、地味な感じするじゃないですか。でも聞いてるとやっぱりいいですよね。
鈴 木 いいですよ、ピアノは。
編 集 で、歌も低音ってのが、またいいじゃないですか
鈴 木 いや、ほめなくていいから。(笑い)
編 集 鈴木さんに教えてもらって、キャスリンバトルとかあの辺の大御所の黒人霊歌を聞いたんですよ。
もちろんきれいなんだけど、やっぱり低い男の人の声というのは独特の哀愁というか、絞り出すようなそういうものがあって、ああいいなあって思うようになりましたよね。
最初はね、地味なんじゃんこれ、とか思ってましたけど(スイマセン)。
鈴 木 地味だよね。音はまったく単純だし。少ない音だし。言葉も少ないし。すきまだらけの音楽だよね。
それをどうやって埋めていくかというのは、さっきのスピリットじゃないけど、それしかないような気がするんだよね。
昔僕がカルテット始めた時、所属した事務所の社長に、「同じ曲を何回も何回も何回も何回も歌っていると、音符と音符の間にすきまが見えるから、そこにアドリブを入れるんだよ。」って言われたのね。
「8部音符がずっと並んでる早い曲でも、次ぎの音符に行く前にすきまが見えるようになったら本物だよ。そこにフェイクをもうひとつ入れられるから。」っていうことに感心して、そればっかりやってたのね。
でも、黒人霊歌って、そういうことやると余計なものに聞こえちゃうんだよね。
編 集 はい、はい。ふ〜ん。
鈴 木 勝手にフェイクしても、「お前やめろよそれ、ダサイ!」って。
「何にもないような感じがする」とかって言われちゃうような曲だけど、それってなんか自分のなさってのが見えてくる気がしたのね。
だから、音符と音符の間を、自分の何かで埋めるっていうのは、技術ばかりじゃないなあってところがあるんだよ。
そういう意味では確かに低い声ってのは、いいのかも知れない。音の鳴らし方で余韻がちょっと残る感じがするしね(笑い)。
でもなかなか日本人では難しいですね。
 
…つづく
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