これは本当にあった、ジュウシマツのピーちゃんの悲劇である。
ピーちゃんは母と娘二人きりの家族の一員として育てられた。
その大好きな母親がある日突然死んでしまった。
悲しみに明け暮れ、動揺し、動転した娘さんは、
それでも頑張って母の葬儀を親族とヒッソリ行っており、
ピーちゃんもその葬儀に参列したのだった。
娘さんは大好きだった母へのお供えに
母の大好物の「豚肉の生姜焼き」を持参した。
そして、最後のお別れの時である・・・。
次々と悲劇はおこったのだ。
この娘さんも、大好きなお母さんの為に
いろんなものを用意したのだ。
そして・・、
まさかの「豚肉の生姜焼き」を御棺に入れようとした。
同席した葬儀屋さんはそれを止めた。
何故って・・・、
これから火葬するのに、豚肉と一緒に焼く事になる訳で・・、
別にダメって訳じゃないけど、
ちょっと考えるとあんまりいい感じがしないというか・・。
娘さんは、結局母が生姜焼きになるのはイヤだと入れるのを諦めた。
簡単に言うとそういうことなのだ・・。
そして、家族の一員ピーちゃんも最後のお別れの時である。
娘さんの手に抱かれて、
「大好きだったお母さんとお別れよ。キスしてあげて」
という娘さんに導かれ大好きなその母親に
ピーちゃんが最後のキスを贈ろうとしたその時・・・、
ピーちゃんに悲劇が訪れた。
ピーちゃんは突然意識を失った・・・。
大好きだったから連れて行こうとしたのだろうか?
それともピーちゃんなりにかなりのショックだったのだろうか・・・?
そんな訳はなく・・。
理由は簡単だ。
御棺の中にはドライアイスが入れてある。
と、言う事は遺体のまわりには、二酸化炭素が充満している訳で、
小鳥のピーちゃんにはその威力は計り知れなく、
一気に意識を失ったのだ・・・。
ピーちゃんが死を意識した頃、
ピーちゃんを抱いた娘さんは 葬儀の途中だというのに、
「ピーちゃーんー」と叫びながら外へ駆け出した。
外で一生懸命泣きながら、
「ピーちゃん、ピーちゃん」と声をかけながら
ピーちゃんの心臓付近を何回も何回も叩いた。
この娘さんにはもはや家族はピーちゃんだけなのだ、
それはそれは必死だった。
するとその願いが通じたのか、ピーちゃんは息を吹き返した。
「よかったー、よかったー」と斎場に戻った娘さんは、
母を失った悲しみから少し離れ、
冷静に残りの葬儀を行ったのだった。
嘘のような本当の話。
悲しみの中、まわりが見えないほど落ち込んでしまうと、
人は普通では有り得ない様な事を案外やってしまうのだ。
それが人間臭さというか、独特のものなのかなと思いながらも、
ピーちゃんが死んでしまわなくてよかったと心から思った。
|